シュタンツェル駐日ドイツ大使

1年生のみなさんは入学から約1ヵ月が経過し、大学というものに、そして獨協というところにもだいぶ馴染んできたことと思います。

さて、すでに1ヶ月前になりますが、1年生のみなさんは入学式でお祝いのスピーチをしてくださったドイツ人紳士のことを覚えていることでしょう。長身でスリムな品の良い「おじさま」という感じの方でしたね。日独関係を歴史的にたどったスピーチもさることながら、20分ほどのスピーチをすべて日本語でなさったのには驚きました。

「おじさま」などと表現しましたが、あのかたは昨年12月から駐日ドイツ大使をなさっているシュタンツェル(Dr. Volker Stanzel)氏、正真正銘のambassadorです(写真中央。左は寺野獨協学園理事長、右はゲートケ本学名誉教授)。正式にお呼びする時には、「駐日ドイツ連邦共和国特命全権大使フォルカー・シュタンツェル閣下」と呼ばなければならない、じつに偉いかたなのです。

日本に大学は山ほどあれど、世界の主要国の全権大使が入学式に出席してスピーチをするという大学はほとんどないと思います。さすが、獨協。ドイツと獨協の深い繋がりを感じますね。

ところで、シュタンツェル大使は、フランクフルト大学で日本学、中国学、政治学を専攻し、その後、京都大学に3年間留学した経歴をお持ちです。博士論文も三島由紀夫の極右思想がテーマだったとか。どおりで日本語がお上手なはずです。駐日大使になる前は在中国大使をされており、まさにドイツきってのアジア通大物外交官といえるでしょう。

そんな偉い方なのに、入学式のあとに獨協の教員や学生と談笑する様子は、とても気さくで親しみやすく、笑顔が優しいおじさま、いや紳士でした。いまドイツ大使館の公式ホームページを見ると、そのトップに、先頃ベルリン映画祭で主演女優賞をとった女優の寺島しのぶさんと並んでちょっとお茶目なポーズをとる大使の姿が載っています(ドイツ大使館ホームページ)。

今年は日本とドイツが交流を始めて150周年目にあたり、来年にかけて「日独交流150周年」を祝うさまざまなイベントが各地で開かれることになっています(獨協でもイベントが企画されています)。この間、きっと、いろいろなメディアを通してシュタンツェル大使の姿を見かけることでしょう。

日独交流、考えてみればこれが獨協のルーツなんですね。

 

90分のShakespeareと9時間のShakespeare

春休み中に、合宿を行ったゼミも多いと思います。私のゼミではみんなで芝居を見に行きました。鳥獣戯画という小さな劇団が上演する『三人でシェイクスピア』という芝居です。

これはもともとアメリカの若者が数名で演じたシェイクスピア劇のパロディが元になっています。3人の役者が次から次へと役を変え、37作品をコラージュにしてものすごいスピードで駆け抜けるように演じるのです。The Complete Works of Shakespeare (Abridged) 『シェイクスピア全集(短縮版)』というタイトルです。遊び心たっぷりのドタバタ喜劇です。

劇団の名前にもいたずらが仕組まれていました。シェイクスピアの故郷ストラットフォードに拠点を置くRoyal Shakespeare Companyの名前は、しばしば短くRSCと省略されます。彼らはReduced Shakespeare Company、略してRSCと名乗っていました。どちらもRSC。イギリスを代表する劇団と、アメリカからやってきた小さな旅芸人一座の名前をうっかりすると見間違えてしまうように、ご丁寧に同じように見えるロゴまで使っていました。

この極小シェイクスピア劇団RSCが演じた『シェイクスピア全集(縮小版)』は、イギリスの観客にも大いに受け、ロンドンのど真ん中の劇場で9年間のロングランで上演されました。そんなに受けた要因の一つは、彼らがシェイクスピアの劇のツボをうまくつかんでパロディにしたからでしょう。たとえばイングランドの王冠をめぐり、果てしない権力闘争と内乱の続く時代を描いた歴史劇の数々。それを彼らは激しくボールを奪い合うアメリカン・フットボールになぞらえたのです。ボール(王冠)は次から次へとめまぐるしく持ち主が変わり、両陣営はフィールド(国土)を我が物にしようと権謀術数をめぐらす・・・。

こんな調子でシェイクスピア劇に描かれた人間臭いドラマの核心だけをチョイチョイとつまんで、つなぎ合わせ、全部で90分くらい。観客は笑い転げている間にあっという間に37作品が終わってしまいます。

その二日前に、私は埼玉市にある劇場で蜷川幸雄氏演出の『ヘンリー六世』を見ていました。こちらは対照的に超大河ドラマ風です。もともと3部作である『ヘンリー六世』を、前後編の二部に再編したものですが、休憩を入れると8時間以上かかりました。

その8時間の間、ずっと繰り返されるモチーフがあります。それは大きな舞台の天井から常に赤バラ、白バラが降り続けるのです。ランカスター家の赤バラとヨーク家の白バラ、その両家の対立が続くバラ戦争を描くシェイクスピアの歴史劇。どちらが勝利しようと、しょせん大義に差はない。薔薇の花が散り続けるように、戦いの中で命の数々が失われていく・・・。「散華」という日本的な無常感と、シェイクスピアの歴史劇に通底する「王冠をめぐる戦いの空しさ」というテーマを重ね合わせて視覚化したところがこの上演の特徴です。

うんと短いパロディと、重厚長大な記念碑的上演。二つを立て続けに見たわけですが、シェイクスピアのテクストの中の「ツボ」を押さえて、それをいかに表現するかが問題なのだと改めて思いました。テクストを読むということは、この「ツボ」を探し出す行為でもあります。今年ゼミで読んでいるのはTwelfth Night。恋は甘く、切なく、そして滑稽・・・。そんな甘さや切なさや滑稽さがどんなふうにこの喜劇に組み込まれているのか、1年間かけてみんなで読み解いていきたいと思っています。

今日、4月23日はシェイクスピアの誕生日、そして命日とされる日です。

 

2010年度授業開始!

いよいよ今日から2010年度の授業が始まりますね.

今年も頑張って行きましょう!

 

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